DonKusak合唱団

第8回自前音楽会

於・練馬文化センター小ホール

開場午後5時30分、開演6時。

全席自由。定価千円。

感想

終わった後のアンケートをまとめました。

プログラム

  1. ミュージカルセレクション
    「ゾクッ!? 男だらけのミュージカル大会」
    1. WILLKOMMEN(CABARET)
    2. THEME FROM RAWHIDE(ブルース・ブラザーズ)
    3. AMERICA(WEST SIDE STORY)
    4. MY FAVORITE THINGS(THE SOUND OF MUSIC)
      編曲、指揮・佐土原陽二
      ピアノ・薮本佳子
  2. 「復活のチェコ男声合唱 -甦るがいい、19世紀チェコ魂!」
    日本初演(ほぼ間違いなし)
    1. SPOLECENSKA
    2. SVOJIK SVEMU
    3. SLOVAN
    4. NA MORAVU
    5. VLASTI
      指揮・山崎知行
      詳しくは下記参照
  3. 楽しい少人数演奏の世界
  4. リーベスリーダー
    作曲・Jブラームス
    編曲・福永陽一郎
    指揮・永島健一
    ピアノ伴奏・西川秀人、渡辺治子

練習日記


*チェコ男声合唱曲集メイキング*

この曲にかける山崎知行氏の叫びを聞け!以下、山崎氏自身による落語。全部読んだらあなたはエラい。


何でチェコ男声合唱曲なのか?確かに1950年代に一部の大学男声合唱団でチェコの曲が歌われたとの記録はあるようだが(曲目は分からん)。

そもそも10年前に秋葉原のレコード廃盤コーナーで不思議な男声合唱レコードを偶然手に取ったのが発端。

「チェコ男声合唱の復活」みたいな題で、当時既に東欧・特にロシアの合唱団に関心のあった当方、興味半分で買ってみた。

聴いてみたらカッコええやんけ、という事で、早速楽譜を探し始めたのが1988年春。しかし曲は寄せ集めだから作曲家もバラバラで、洋物に強いと評判の楽譜屋さん数軒にお願いしたものの、全くなしのつぶてのまま、他に手だても無く数年が過ぎ去った。

話が大きく動いたのはインターネットが普及しはじめた一昨年。

例のレコードを出した会社がチェコスプラフォンに吸収されているのが分かり、ここの担当者に手紙・メール攻勢をかけたら、ついに今年になって、担当者がレコードの演奏団体のメンバーを紹介してくれた。

後は怒涛の突き押しで、この「A.P.S Moravan(モラヴィア・アカデミー・コーラス・ソサィエティというような意味)」のメンバーに手紙を書き、ついにレコード収録の14曲を超える20曲以上の楽譜をプレゼントして頂きまして。

いやあ嬉しいやおまへんか。今どき「お代いりまへん、贈りもんでっせ。日本でチェコの歌が響き渡るなんて最高や、なあ指揮者どの」と来た日にゃ。

15年の想いを叶えて下さいましたラディスラフ・ピェニチカ法学博士殿、本当に有り難うございました。

楽譜が手に入ったら今度は歌ってみたいと思うのが人情ってもんや。随分長いこと似たようなレパートリーばかりの日本男声合唱界、ここは一発、演奏会に乗っけて一矢報いる、じゃなかった、恩に報いなけりゃ男がすたる。

しかしここに大問題が。それは歌詞がチェコ語! さっっぱし意味分からん。しかも楽譜が古色蒼然、ぼろぼろだったり手書きだったりパート譜だったり。凄いのは歌詞がチェコ語の手書き筆記体なんてのがあって解読出来ないのもある。

男声ゆえの密集和音の為、聞き取って作成していた楽譜とも細かいところが随分違ってまして。またレコード録音に際し作為的に楽譜と異なる和声にしているところもかなりありまして。

そこで、まず99年3月の自前演奏会に載せられそうな曲を5曲選び、次いで大枚はたいて楽譜作成ソフトを導入し、原典忠実主義を基本としつつ記譜の誤りや和声・編成のおかしいと思われる部分の修正を行い、浄譜を敢行した。これに2ヶ月(有給休暇3日含む)。

更に、チェコ語が少しロシア語に似ているようだったから、これも大枚はたいてわざわざチェコ語辞典を購入、これも1ヶ月(有給休暇1日含む)かかって遂に5編の詩の翻訳を完成させたのであった。

しかも発音まで調べ上げた当方、まるでストーカーである。

上記作業を終えた感想は、

-今回やる5曲の浄譜と訳詞がまがりなりにも完成した今、自分で自分を誉めたいです。

だいたいチェコ語辞典を買い込んだからってチェコ語が分かる訳ゃ無いんだよな。1秒も習った事無いってのに。語学の正体は推理と忍耐と辞書引く指先や、よう分かった。

そんなわけで、今回のチェコ男声合唱曲集の正式名称、以下決定!

「復活のチェコ男声合唱 -甦るがいい、19世紀チェコ魂!」

間違いなく本邦初演でしょう。というのは、この曲の入ってるレコードの題名自体が「Revival of Czech Male Chorus」ってんだから、現地でも忘れ去られていたに違いないのさ。

自前演奏会で演奏する予定の5曲、当方のつけた邦題は:

  1. 交友歌(SPOLECENSKA)
  2. 我等同胞(SVOJIK SVEMU)
  3. スラヴ魂(SLOVAN)
  4. モラヴィアに捧ぐ(NA MORAVU)
  5. わが祖国(VLASTI)

全て19世紀の作曲家によるもの。どうです、日本だったら思想結社の世界ですね。でも彼らはシンプルに大地と自然とその恵みと、そして兄弟仲間を歌っているので、詩も曲の構成も骨太なもんです。

いくつかの曲は「Hlahol」(直訳すると「騒ぎ(?)」)と呼ばれるジャンルのもののようであり、この手の男声合唱曲がかなりあるようなのですが、皆様御存知の通り第一次大戦の頃に神戸港で関学グリーが駐留中のチェコ軍から「U Boj」を教わった他には、庶民的レベルでの文芸流行があまりないせいか、ロシア民謡と違い全く楽譜が流通していません。

まあ「U Boj」だってクロアチア語ですから、チェコの歌じゃ無いんですけどね。

さて、当節TVで甦るのはアイアンシェフですが、我々が必要とするのはアイアンヴォイスです。各パートの方、音楽的責任を全うしてから倒れて下さいね。

訳詞は以下の通り。今後修正がビシバシ入るかも知れませんが、大体こんな意味でっせ。

1.<交友歌>

いざ卓につかん、兄弟よ、友よ!
酒を酌み、陽気に歌わん
旨いワインは真珠と輝き
我等をこの世の憂さから解き放つ
ボヘミアのワイン、ボヘミアの歌が
我等の澱んだ血を昂ぶらせるのだ

五月の花も咲き満ち溢れるに
どうして沈んだ我等でいられようか
チェコの娘達が、輝く青い瞳を
我等に差し向けているのだ
いざチェコの娘達を誉め称えん
娘達のためにチェコの歌を歌おう

おお我等が祖国、優しき母よ
そなたは全てを歓びの花環に編み込みぬ
歌にワイン、美しい娘達は
皆ボヘミアの贈り物なり
ボヘミアの大地、ボヘミアの歌は
皆麗しき美の創造物なり

2.<我等同胞>

我等同胞、腕を組もう
大いなる鎖を築こう
我等のこの人生
奸賊の剣に貫かれようとも
裏切りが父なる言葉を
滅亡させようとも

我等同胞、腕を組もう
ボヘミアの森からヴァーフ川まで
団結した意志、団結した魂
神の如く奇跡をおこそう

互いに愛せよ
愛により我等の声は一つとなる

団結せよ
調和なきところ、束縛は易々となされる

気を緩めるな
神も我等を勇気という鎧で守って下さる

我等同胞、腕を組もう
ボヘミアの森からヴァーフ川まで
団結した意志、団結した魂
神の如く奇跡をおこそう

3.<スラヴ魂>

俺は身も心もスラヴ人だ
世界中にそれを知らせよう
我が心は誇りを知っている
我が心は誇りを知っている

俺には春に花咲くように大勢の兄弟がいる
それぞれが皆世界を持っているんだ
スラヴの兄弟はどこにでもいる
スラヴの兄弟はどこにでもいる

エルベ川を北へ下っていくと
そこは黄昏に染まった大地がある
波立つバルト海がある
ここにもスラヴの兄弟がいる

そうさ、俺は世界に告げよう
俺は身も心もスラヴ人だ
我が心は誇りを知っている....

4.<モラヴィアに捧ぐ>

モラヴィア、そなたは神々しいスラヴの大聖堂
母なるスラヴより生まれし歌い鳥の
そなたを賞賛する輝かしい歌声が響き渡らんことを

天を仰げ、兄弟よ、感謝の意を捧げよう
栄光あるチェコの民族を
快活な精神と勇敢な心という鎧で加護して下さる事に

我等の良き子孫達は
末長きに亙って
我等が大地を彩るであろう

5.<わが祖国>

我が愛すべき祖国よ
そなたの祝福によりて
皆それぞれが贈り物を頂いている
そなたの息子は何を贈るべきか

夜鶯(ナイチンゲール)は
そなたの為に旋律を歌い
草原はそなたの為に花を咲かせ
土は穂を実らせる

川は黄金、真珠と輝き
泉は癒しをもたらし
山肌は輝石で飾られている

我が愛すべき祖国よ
我が熱き心を
最愛の思いを込めて
そなたに捧げよう

いやいや、本番が楽しみ、楽しみ。全国津々浦々の男声合唱団の皆様、是非聴きにいらして、貴団のレパートリーに加えて下さいませ。

御意見御質問は下記まで。
山崎 知行 Tmohki_Yamazaki@msn.com


*落語ここまで。以下編集部記。 こんなん全部読んでくれる人がいるだろうか?ここまで読んでいただいた方、あなたはエライ。あなたも立派なストーカー。これを読んだらもう演奏を聞かずにはいられない。


ドンクサックのホームページ